最近、生成AIを使う方も増えてきており、文章作成も手軽になってきたなと感じています。でも、「文字校正」についてはどうでしょうか?

まずその意義を感じられない方も多いでしょうし、実際校正ルールを無視した表記を目にすることが増えたように感じます。

動画のテロップや、テレビ番組のみならず、有名な作家さんの書籍まで‥‥。校正ルールに固執するつもりはないので、その点はここでは細かな言及は避けますね。

ざっくり言ってしまえば、その原稿の信頼感に結び付く部分が校正されているかどうか、ではないかと思っております。

校正について簡単に紹介した記事はこちらです↓

校正されていない文章って? ~楽しい見分け方~

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校正されていない文章があふれている一方で、校正者への道を目指している友人からは、「ソフトの校正機能などが充実してきたら、わたしがやる意味が見いだせない」と気落ちした言葉を聞いたこともあります。

情報爆発時代とまで言われ、だれでもが記事を半自動的に発信できる時代になりましたがその膨大な情報量のなかで、人の手をかけて校正作業をする意味はなんでしょうか。

考察したり、ソフトでの校正作業との違いを比べたりしながら、校正作業に対する想いや不変の部分に向き合ってみたいと思います。

気持ち、への気づき

AIでの校正との違いとして、まず挙げられるのは「機微」への気配りや気づきではないでしょうか。

「機微」を辞書引用すると『容易には察せられない微妙な事情』とあります。AIの学習量が増えれば、作業の質も上がってくるのではと思いますが、「文字通り」の意味を拾いがちなAIにとっては、すべてを拾い切れるとは今のところ言い難いのではと思います。

学習が進めば理解できる要素は、一つずつ増えるのでしょうが、さりげない伏線や、韻を踏んだ表現、台詞に隠されたダブルミーニングなど、文学の世界は広いのではと思っています。

私は創作者ではなく校正者(編集者寄り)なので、気づく範囲は狭いのではと思いますが、それでも

 ・この方が響きがきれいなのでは?

 ・セリフをこんな風に補うと、伏線を拾えますよ

 ・ここは、仮名に開いた方が○○のような誤読を減らせます

など小説では気づく範囲でご提案しています。

そして、それらの赤字とは言えない提案の部分が「全スルー」でも、まったく傷つかないのが私の特長かもしれません。創作活動の+αになれば使っていただければと思いますし、あくまで自分は「気持ちが通う校正ツール」であると思っているためです。

提案自体もそれらのコメントは不要と思われる方にはもちろん原文を尊重した校正のみをいたします。

コメントを多く入れればその分、確認のお手間もかかります。そのため入れるかどうかもかなり慎重に判断しています。

(リピーターさまの場合、前回のルールを参考にしながら、やり取りを減らせる場合もございます。)

シンプルな校正のみ、というご要望でも、複数に読めてしまう場合や差別的に受け取られてしまう心配がある場合にはさまざまな方向から、何度も一緒になって考えます。

その作業は残念ながらAIにはできないことだと思っています。

共感とともに

執筆されるなかで、きっと行き詰ったり校閲チェックやレイアウト・字数調整に頭を悩ませたりと、さまざまな想いをお持ちでご依頼くださると思います。

まずは執筆される方への共感を忘れず、ニーズを把握します。

どこにお悩みがあるのか、課題を解決したい箇所があるのか、気にしている「書き癖」をお持ちか、変化をつけたいところがあるのか、等々ヒアリングを重ねてから作業をスタートします。

これは、当然ながらAIにはできないことだと思っており、人と人のやり取りの中で得られるエネルギーのような、無形のエールのようなものも含めて価値の高い部分だと思っています。

また、どんなにAI校正が便利になったとしても失われない部分だと思っています。著者さまのそれぞれお持ちの特別なチカラに対して、尊敬の気持ちをお伝えすることは欠かさず、素直に本音でコミュニケーションをしています。

私にとっては長所に気づいて明文化することで、その原稿の良さに深く触れることにつながり、学びがあるからです。そのため、多くの出会いに感謝しています。

ちょっと横道に逸れますが、一度校正者にご依頼いただくとご自身の特徴がみえるので、以後の原稿でも「著者校正」がスムーズになります。

というのも、コメントには理由もそえて校正点をお伝えするので、お返しした原稿を確認すると、それだけで校正スキルが上がるのです。

また、執筆の際に基本の校正ルールを知りたい場合もお気軽にお伝えいただければと思います。一問一答できるものはお取引後でもご質問に無料でお答えしています。

話を戻すと、上記のようなソフト面の確認事項のほかに、校正ルールを新聞表記ベースとするか(記事やビジネス書など)、常用外漢字があってもルビ無しとするか(創作物に多いです)確認します。

表記ゆれ*については、「前後数ページは揃えた方が良い」という、漠然としたルールがあるのですが「確認してほしい」とおっしゃられる場合もあれば、「漢字と平仮名のバランスも考慮して執筆しているのでそのままにしてほしい」とおっしゃる方もいます。

そのあたりを手作業で尊重していくのも、ソフトには難しいのではと思っています。

*表記ゆれとは

同じ原稿内の同じ言葉が、使われる箇所によって表記が違っていることです。

頻発するのは「私/わたし」「見る/みる」「事/こと」などです。

それぞれに選ぶ理由や根拠もあると思うのでルールのご案内と共に、ご意向を確認しています。

校正ソフトやAIによるチェックはどこが心配?

私も校正ソフトを有料で契約していますが、長所・短所を活かした付き合い方にも慣れてきました。

先に欠点からまいりましょうか。

ことごとく、「脱字」に弱い、と思っています。

送り仮名は許容ルールがあるので間違えていたとしても、いくらかダメージは少ないのですが、意味を取り違えてしまうほどの脱字も拾えないことがあります。

人が作業する場合は「目が滑って」見落とすこともあるので、うんとゆっくり読んだり体裁を変えて見直したりするのですが、ソフトの場合には、あっさりと、思いきり見逃します。マイクロソフト word の校正機能なども、だいぶがんばってくれるなぁと思うのですが、脱字や固有名詞以外の表記ゆれまでは拾ってくれませんよね。

あとは、繰り返し要素のチェックもソフトでは弱いですね。

同じ文意を強調するために、同じ言説を2回繰り返すにしても3回、4回となるとさすがにくどく感じてしまう場合があります。

私もよくやってしまうので身に覚えがあるのですが、言い方に変化を付けるのも忘れて、同じ節回しで繰り返してしまうのです‥‥。

その場合には、言い方を変えるだけでもリズムが変わって読みやすくなるケースもあれば、三つの繰り返しを二つに減らすだけでも、読みやすくなります。

この「同じことを繰り返していないかどうか?」もソフトでは気づいてくれないので、通し読みをしながら、「この範囲の文意は3回目ですよ」といった形で、できるだけさりげなくお伝えしています。

でも助けられることもあります。特に私が思い入れがあるのは「1カ月ほど」という重ね言葉です。

「拾うのが苦手な言い回し」は校正者それぞれにあると思うのですが、私は上記の言葉を口語として触れる機会が多く、発見を苦手としていました。

校正者として料金をいただく以上、見落としはあってはならない、と冷や汗をかきながらお仕事していますが、苦手な言葉を機械的に助けられたのには「この時代に校正のお仕事をはじめて良かった」と有難く感じたものです。

校正ソフトやAIによるチェック、便利なところは?

ソフトが便利と思うのは誤字

登録されている言葉は細かく、かつ瞬時に拾ってくれます。専門用語などは思いきりスルーされてしまうので、やはり国語辞書は手放せませんが‥‥。

あと文章内の読点(、)の数も一気に確認してくれるので、一文の文章量に対してあまりに多い場合や、誤読を生む位置に読点が打たれている場合にはご連絡します。

そして、全角半角の揺れなどは、機械的にチェックした方が確実。

やはりソフトによるダブルチェックをお願いする要素です。

たとえば数詞(1.2.3等)や丸カッコ(校正ではパーレンと呼びます)の全半角の違いなどは、人の目よりも確実です。これは論文の校正などでは欠かせない観点だと思っています。

今回はちょっと混み入った校正の話題でした。個別のご事情やご希望に応じた仕事をできればと念じながら、一文字ずつ向き合っております。

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